着床障害
良好胚移植を繰り返しても妊娠に至らない場合は、原因検索をお勧めします。
良好胚移植を繰り返しても妊娠に至らない場合は、原因検索をお勧めします。
当院では、良好胚盤胞を2回以上移植しても妊娠に至らない場合、着床不全の可能性を疑い、治療方針の見直しや原因検索のための検査を考慮していきます。特に、40歳以下の方で3回以上良好胚盤胞で結果が出ない場合には、反復着床不全(RIF)と判断し、積極的な精査をお勧めします。
着床不全の原因
着床に至らない場合、原因として大きく以下の3つを考え、検査・治療を勧めていきます。
慢性子宮内膜炎:CEについて
子宮内膜に認められる局所性の炎症性疾患。多くの場合、自覚症状はありません。CEと不妊・不育症との関連が近年指摘されています。診断は、子宮鏡や内膜生検で形質細胞の存在を確認することにより行います。治療は抗菌薬の内服が基本になります。
着床不全の検査
子宮鏡検査
子宮内膜ポリープや筋腫の状態、慢性子宮内膜炎CE、癒着、子宮形態異常等の有無を診断します。検査の時期は月経が終了してから排卵するまでの時期が適しています。軟性鏡という細いカメラを使用します。ベッドサイドにモニターが付いていますので、検査の様子は一緒に確認していただくことが可能です。検査自体は数分で終わります。検査結果は、検査終了後に診察室にて詳しく説明いたします。静止画にした結果を持ち帰りいただくことができます。子宮鏡検査の結果、治療や追加検査が必要と判断された場合には、当院で治療をお受けいただける場合と総合病院への紹介が必要になる場合があります。
子宮内フローラ検査(EMA・ALICE・膣内細菌培養検査)
着床環境の評価法の一つとして、子宮内膜マイクロバイオーム検査(EMMA)、感染性CE検査(ALICE)があります。RIFの方の6割で子宮内フローラの乱れやCEの存在が指摘されています。
Cicinelli E, et al : Chronic endometritis due to common bacteria is prevalent in women with recurrent miscarriage as confirmed by improved pregnancy outcome after antibiotic treatment. Reprod Sci 2014 ; 21 : 640-647.
当院では簡易的な膣内細菌培養検査を実施することで、子宮内フローラ検査の代用とする試みを実施しております。子宮と膣はつながっており、子宮内細胞叢の一部は膣内細菌叢からきているのではないかといわれています。そのため、膣内細菌叢は子宮内細菌叢を反映していると推測され、膣内細菌叢を改善することが、子宮内細菌叢を改善することにつながっていると考えております。子宮内フローラ検査に比べると免責費用が抑えられ、患者さんたちに受けていただきやすい検査となっております。膣内細菌叢でラクトバチルスがみられなかった方にはラクトフェリンのサプリメントを推奨しています。
【 ラクトフェリンについて 】
直接的にラクトバチルス属を増やすものではありませんが、プレバイオティクス治療(有用菌の働きを促す物質を取り込む方法)として身体に取り込むことで、子宮内のラクトバティルスの割合を増やし、妊娠率の向上を期待します。Reprod Med Biol. 2018 18:72-82
サプリメントとしてのラクトフェリン(当院で購入可能なものⓇルナリズム)とⓇInvag、ⓇLactofloraなどの腟内用カプセル(個人輸入が必要)があります。
着床の窓 WOI検査(ERA)
子宮内膜に受精卵が着床する時間や時期には個人差があることが2014年IVI Valencia(スペイン)施設から発信されました。ERA検査は、子宮内膜組織より抽出した発現プロファイルを遺伝子解析することで子宮内膜への着床のタイミングを評価できる検査です。着床の適切な時期を特定することで、結果に基づき適した時期に胚移植を行うことを目的とします。良好胚移植で繰り返し着床に至らない方が対象となります。保険適応はありません。
EMA・ALICE検査はERA検査と同時に受けることができます。
免疫寛容検査(Th1/Th2比・VitD)
当院では、着床障害や流産を繰り返す方には血液検査でTh1/Th2比、25-OHビタミンD(貯留型ビタミンD)を測定し、必要な方にサプリメントとしてビタミンDを摂取することをお勧めしています。
【 Th1/Th2バランスについて 】
リンパ球にはT細胞と、抗体を作るB細胞があります。T細胞には、免疫反応を調節するヘルパーT細胞とウイルス感染細胞などを障害するキラーT細胞があり、さらにヘルパーT細胞にはTh1細胞とTh2細胞とがあります。免疫応答に関与するのがTh1/Th2細胞バランス(Th1/Th2比)です。妊娠の成立と維持に適したバランスは、Th1細胞が弱くTh2細胞優位な状態とされています。着床障害や流産の原因として、このTh1/Th2バランスの異常(Th1細胞優位、Th2細胞が弱い状態)が指摘されています。
また、ビタミンD欠乏は、着床率の低下や習慣流産に関与しているとの報告があります。
Fabris A,et al:Fertil Steril. 2014;102(6):1608-12.
Ota K、et al:Hum Reprod. 2014;29(2):208-19
ビタミンD製剤投与により、Th1/Th2比が改善される可能性があります。
Nutrients 2018;10;902
β2GPIネオセルフ抗体検査
β2GPIネオセルフ抗体とは、不妊症・不育症の原因の1つとして近年新たに発見された抗体です。反復着床不全・子宮内膜症の方の約30%が、不育症の方の約20%が検査陽性であることが確認されており、陽性の方はβ2GPIネオセルフ抗体によって血栓が生じやすく、妊娠しにくい・流産が起きやすい状態になっていると考えられます。血栓を予防する治療によって、不妊症の方は妊娠成功率が31%程度増加、不育症の方は生児獲得率が37%程度増加する研究成果が報告されています。
β2GPIネオセルフ抗体検査情報サイト,Y. Ono et al., Journal of Reproductive Immunology (2023),
K. Tanimura et al., Arthritis & Rheumatology (2020)
こんな症状はありませんか?
●着床障害ではないかと心配される方
●良好胚盤胞を移植しても結果が出ない方
●移植を繰り返しているが妊娠に至らない方
●生化学的流産を繰り返す方
着床障害診療日
診療日 | 随時(予約制) |
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※備考 | 日程は変更になる場合があります。予約時にご確認ください。 |