不育症
不育症とは
不妊症は妊娠そのものが困難である状態であるのに対して、「妊娠は成立するものの流産を2回(反復性流産)、または3回以上(習慣性流産)繰り返してしまう状態」と定義されています。流産は、全妊娠の1割〜2割に起こるとされていて、女性の年齢とともに流産率は上がると言われています。不育症の方は全国に2〜3万人おり、2回の流産経験者は4%程度、3回以上の流産経験者は1%程度、また、妊娠した女性の約4割は流産の経験があるといわれています。
当院では妊娠成立はもちろんのこと「不育症」の治療を行うことで、無事に出産できるよう、サポートしています。流産や死産を経験された方の中にはこのまま"子どもを授かれないのでは・・・" "辛い経験をしたくない・・・" と考える方も多いのですが、不育症に悩む方の8割以上はその後、出産することができるとも言われています。原因検索から不育症治療までをサポートしていきます。
・β2GPIネオセルフ抗体検査情報サイト(外部ページ)/β2GPIネオセルフ抗体検査について(着床障害ページ)
不育症の原因
妊娠初期(妊娠12週未満)に起こる早期流産の原因の多くは受精卵(胎児)の染色体異常とされており、偶発的(偶然に)起こります。偶発的流産であった場合は、次の妊娠に影響を及ぼす事はなく、次の妊娠が期待できます。
不育症の定義の通り、流産が繰り返される場合は不育症の原因となり得る「リスク因子:不育症となる要素・要因があること」が存在することがあり、要因は大きく「子宮形態異常」「血栓性素因」「内分泌異常」「染色体異常」のような原因が考えられます。
不育症の治療はリスク因子によって治療方法も異なるため、慎重な原因検索が必要となります。
子宮形態異常
中隔子宮や双角子宮など、子宮の形と流産には関係があることが知られています。子宮形態異常の種類により治療方法が大きく異なるため、慎重な判断が必要となります。
*中隔子宮:外見は正常だが、子宮内腔に仕切り様構造をもつ。最も問題になると子宮形態異常であると言われています。
内分泌異常
甲状腺機能低下症・甲状腺機能亢進症などの甲状腺異常は流産と深く関係がしています。これらの甲状腺機能異常では、機能が正常になった後に妊娠を計画することが重要です。糖尿病の場合も血糖を充分にコントロールした上で妊娠計画を立てましょう。
染色体異常
夫婦のどちらかに染色体の構造異常があり、流産を繰り返してしまう場合、まずは遺伝カウンセリング外来を受診し、正しい知識を身につけた上で染色体検査を行います。染色体異常の種類により染色体異常を引き継いだ胎児を妊娠する確率や、正確な着床前診断の知識を持った上で治療方針を検討しましょう。
抗リン脂質抗体症候群
抗リン脂質抗体症候群では、血栓症のリスクが高まります。血液を固まりにくくする治療を行います。良く用いられるお薬として、低用量アスピリンとヘパリンの併用療法が検討されます。
血液凝固因子異常
第[因子・プロテインS・プロテインCは血液が固まることを阻害する役割をします。それらの因子が欠乏すると、血液が凝固しやすくなるため流産に繋がりやすいとされています。これらの欠乏症では、低用量アスピリンの単独または低用量アスピリンとヘパリンの併用療法が検討されます。
リスク因子の検査について
子宮形態検査
子宮の形態は外見からでは判断できません。内診・経膣超音波検査・子宮鏡検査・子宮卵管造影検査などによって診断します。必要に応じて、MRI検査を行うこともあります。
また、子宮形態検査を行う超音波診断装置として当院ではGEヘルスケア社制Voluson E10・S10を採用しております。
最先端技術で作られたプローブから得られる膨大な情報を余すことなく描写することが出来るため、高精度の子宮・卵巣などの骨盤内臓器の診察・診断が可能です。(この超音波画像の子宮形態は正常です)
Voluson E・Sシリーズの当院での活用内容
高性能エコーを導入することで不妊症・不育症診察のクオリティの向上やハイリスク妊娠の判断精度の向上が可能です。当院では以下のように活用しています。
・不妊症や不育症の原因となりうる、子宮形態異常の診断精度の向上
・より正確で詳細な卵胞計測が行えることで、排卵や採卵のベストなタイミングの判断が可能
・通常エコーでは描出困難な、高度肥満の方や骨盤内癒着のある方の卵巣のモニタリングが可能
・子宮、卵巣などの骨盤内臓器の診断精度の向上、異常の早期発見
血液検査
内分泌検査 | 内分泌疾患の有無を調べます。甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症・糖尿病 など |
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夫婦染色体検査 | ご夫婦それぞれの染色体に異常がないかを調べます。 |
抗リン脂質抗体検査 | 抗リン脂質抗体検査が陽性の場合、12週後に再検査を行います。再検査でも陽性であった場合は抗リン脂質抗体症候群と診断されます。 |
その他 | 患者さまの症状に応じて、必要であれば血液凝固因子検査(第[因子・プロテインS・プロテインC)や抗PE(ホスファチジルエタノールアミン)抗体検査などを検討します。 |
低アスピリン・ヘパリン療法について
血液検査などにより、血液凝固因子異常や抗リン脂質抗体症候群と診断された方は、胎盤の母体血液から酸素や栄養をやりとりする絨毛間腔という場所に血栓ができやすくなります。血栓ができることにより絨毛の発育が阻害されると、血液循環が悪くなり赤ちゃんに酸素や栄養が充分に行き渡らなくなるため、流産や死産の原因となります。その際は、血液を固まりにくくする低用量アスピリンの内服と血液凝固防止剤のヘパリン注射剤による治療が検討されます。
不育症診療日
診療日 | 随時 |
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予約方法 | 初診を受診後にご予約いただけます。再診枠でお取りください。 |
※日時に変更がある場合がございます。予約の際にご確認ください。
反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)についてのQ&A
以下のQ&Aは、平成23年度厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)で作成・公開された、「地域における周産期医療システムの充実と医療資源の適正配置に関する研究」で作られたものです。