投稿日:2026.05.13 最終更新日:2026.06.11
不育症に関するQ&A
目次
- 2回続けて、胎嚢が確認できず初期流産と診断されました。不育症にあたりますか?
- 流産はどれくらいの頻度でおきますか?
- 流産が起こるのはいつごろが多いのですか?
- 女性の年齢は流産と関係しますか?
- 不育症とはどういう状態ですか?
- 不育症の原因は何ですか?
- 不育症の検査にはどのようなものがありますか?
- 不育症の治療にはどのようなものがありますか?
- 医療機関によって、不育症の検査内容・治療方針が異なるのはなぜですか?
- 不育症検査がすべて正常で治療不要と言われましたが、自費や特殊検査のできる病院へ行くべきでしょうか?とても不安です。
- 子宮形態異常と診断されました。手術は必須ですか?手術を回避する方法や、娘に遺伝して同じ症状や奇形が出る可能性についても教えてください。
- 夫側の染色体異常が原因と言われましたが、今後の対応や子供への遺伝の可能性について教えてください。
- 血栓体質のためアスピリンとヘパリンを勧められました。現在妊娠中ですが、胎児への影響が心配です。
- 不育症でも妊娠、出産はできますか?
- 体外受精で2回続けて胎嚢確認後に流産しました。不育症に該当しますか?
- 一人目は特に問題なく妊娠し出産しました。その後、流産が続いています。どうしたら良いでしょうか?
- 流産をくり返し、気分が落ち込んで外出ができなくなりました。どう向き合えば良いでしょうか?
- 流産・死産した悲しみが消えません。同じように悲しんでいた夫が、今では流産・死産のことを忘れたようで、そのことが許せません。
- 2回流産し、次の妊娠が怖くて避妊を続けています。35歳という年齢への焦りもあり、どうすれば良いのか悩んでいます。
- 不育症治療を経て出産した場合、次の妊娠でも同様の治療が必要になりますか?
- 不育症の場合、妊娠前の普段の生活で注意することは何でしょうか?
2回続けて、胎嚢が確認できず初期流産と診断されました。不育症にあたりますか?
妊娠検査薬の感度が上がったため、子宮の中に赤ちゃんの袋が見える前に検査で陽性となり、その後、月経が来てしまい、赤ちゃんの袋が見えないケースが経験されるようになりました。このような場合を生化学的妊娠と呼びます。以前は化学流産と呼んでいましたが、何の異常もないカップルでも30%~40% と高率に起こっていることが判り、生化学的妊娠と呼ばれるようになりました。不育症は2回以上の流産(子宮の中に赤ちゃんの袋が見えてからの流産) とされていますので、生化学的妊娠をされたからといって検査や治療を受ける必要はありません。あまり神経質にならず、次回の妊娠に臨まれることをお勧めします。
流産はどれくらいの頻度でおきますか?
女性の年齢にもよりますが、妊娠が確認された例の10~20%程度が流産になると言われています。ただし年齢が35歳以上になると流産率は上昇してきます。なお、妊娠反応陽性となった後、子宮の中に赤ちゃんの袋が確認される前に流産してしまう生化学的妊娠(流産)はもっと高率(30~40%に起こりますが、通常生化学的妊娠は流産回数には含めません。
流産が起こるのはいつごろが多いのですか?
妊娠12週未満の早期流産が大部分(全流産の約90%)を占めます。妊娠12週以降22週未満の後期流産の頻度は少ないとされています。厚生省心身障害研究班報告書(平成3~5年度)によると全妊娠に対する流産率は早期流産が13.3%、後期流産が1.6%と報告されています。
女性の年齢は流産と関係しますか?
妊娠の年齢が高齢になると流産率が増加すると考えられています。海外の報告ですが、母体年齢35-39 歳で流産率が25%、40歳以上になると流産の頻度が51%との報告があります。
不育症とはどういう状態ですか?
妊娠はするけれども、流産、死産や新生児死亡などを繰り返して結果的に子供を持てない場合、不育症と呼んでいます。習慣(あるいは反復) 流産とほぼ同意語ですが、これらには妊娠22週以降の死産や生後1週間以内の新生児死亡は含まれません。不育症はより広い意味で用いられています。
不育症の原因は何ですか?
妊娠初期の流産の大部分は胎児(受精卵)の偶発的な染色体異常が原因で、両親のリスク因子が原因になっている場合は少ないとされています。そのため、1回の流産でリスク因子を調べる必要はありません。2回~3回以上流産を繰り返す場合は、両親のどちらかにリスク因子がある場合があるので、検査をお勧めします。1 回の流産でも妊娠10週以降の場合では、母体の要因が大きくなってくるとされていますので、検査をする意義はあると考えられます。夫婦の染色体異常に加えて、妻側の要因としては、子宮形態異常、内分泌異常、凝固異常など種々の要因があります。厚生労働科学研究班(齋藤班)では、詳しく調べてもリスク因子がわからない場合が64% ほどありました。その多くは、偶発的な胎児の染色体異常を繰り返しただけと考えられています。
不育症の検査にはどのようなものがありますか?
流産等を2回以上繰り返す場合には、不育症のリスク因子の検査が勧められます。血液検査により、夫婦それぞれの染色体の検査、糖尿病や、甲状腺機能などのホルモン検査、凝固因子検査(血を固める働きをみる)、抗リン脂質抗体測定などを行うこともあります。子宮の形の異常を調べるために子宮卵管造影検査や超音波検査を行います。必要に応じてMRI検査などを追加して行う場合もあります。リスク因子の有無を調べることにより、次回の妊娠に役立てることができます。
不育症の治療にはどのようなものがありますか?
検査で見つかったリスク因子について治療を行います。内科疾患やホルモン分泌異常が見つかった場合にはその治療を行います。凝固因子異常や抗リン脂質抗体症候群では、抗血栓療法(アスピリン内服やヘパリン注射)を行う場合もあります。原因不明不育症に対しては、積極的な治療をしない経過観察で比較的良好な結果が得られています。治療した症例、経過観察の症例をふくめて、不育症外来を受診した方は、最終的に約80%以上が出産に至ると報告されています。
医療機関によって、不育症の検査内容・治療方針が異なるのはなぜですか?
不育症に対するスクリーニング検査や、治療方針はこれまで定まったものがなく、混乱がおきていました。そのため、厚生労働科学研究班(齋藤班) では、不育症管理に関する提言を取りまとめ、全国の産婦人科医療機関に2011年3月に送付しました。このような混乱は、少しずつ減少しています。十分に担当の先生方と相談し、ご自身が納得のいく検査や治療を受けることをお勧めします。なお、不育症管理に関する提言は、Fuiku-Laboフイク-ラボ (不育症治療に関する再評価と新たなる治療法の開発に関する研究) に掲載されていますので、参照ください。
不育症検査がすべて正常で治療不要と言われましたが、自費や特殊検査のできる病院へ行くべきでしょうか?とても不安です。
不育症の検査を行なっても、6割以上の方は、はっきりとしたリスク因子がわかりません。一般に、流産の約80%は赤ちゃん(胎芽、胎児) の偶発的な染色体異常で起こりますので2回流産した場合、計算上64%が偶発的事例、3回流産した場合は51%が偶発的事例ということになります。偶発的な染色体異常は、カップルに何も異常がなくても、たまたま赤ちゃんに異常が起こるケースですので、特に治療をしなくても、次回の妊娠時には高い確率で出産に至ることが、厚生労働科学研究班(齋藤班) でも判っています。カウンセリング等で十分にお話を聞いた方が、次回妊娠成功率が高くなるという報告もありますので、相談窓口や医療機関で十分な時間をとって相談されてはいかがでしょうか。
子宮形態異常と診断されました。手術は必須ですか?手術を回避する方法や、娘に遺伝して同じ症状や奇形が出る可能性についても教えてください。
子宮の形態異常(子宮奇形)では手術を行うこともありますが、手術の有効性については十分に解明されていない場合があります。主治医の先生とよく相談して決める必要があります。子宮に形態異常があるからといって、赤ちゃんにも形態異常が出ることはありません。ご安心ください。
夫側の染色体異常が原因と言われましたが、今後の対応や子供への遺伝の可能性について教えてください。
染色体異常は持って生まれたもので治すことはできませんが、染色体異常があっても出産できる可能性は十分にあります。均衡型転座というタイプでは最終的に60~80% が出産に至ることが最近判ってきました。出産の確率や赤ちゃんへの遺伝については、染色体異常の種類によって異なりますので、しっかりと遺伝カウンセリングを受けることが大切です。
血栓体質のためアスピリンとヘパリンを勧められました。現在妊娠中ですが、胎児への影響が心配です。
妊娠中の薬の使用については、事前にその必要性、効果、副作用などについて十分に説明を受けることが必要です。医学的な必要に応じ、アスピリンやヘパリンが使用されることがあります。海外の大規模な疫学調査では、妊娠中のアスピリンと先天異常児の因果関係は認められていません。また、ヘパリンは胎盤を通過せず、赤ちゃんには移行しません。どちらもアメリカ食品医薬品局のリスクカテゴリーではC(危険性は否定できない) となっています。しかし、血栓を予防する作用のあるワルファリンは、胎盤を通過し胎児に異常を生じるため、妊娠中には使用できません。ヘパリン在宅自己注射の実施に際しては、しっかりと注射手技の教育を受けた上で、出血が止まらない、意識障害、冷や汗、まひなどの症状があれば、すぐに医療機関に連絡することが必要です。
不育症でも妊娠、出産はできますか?
不育症の方も、80%以上の方が出産することができます。不育症の方の多く(約半数)は、偶然、胎児染色体異常を繰り返した偶発的流産です。そのような方の場合は、特別な治療を行わなくても次回妊娠予後は良好なので、安心して妊娠できる環境が何より大切です。子宮形態異常や血栓症のリスクが高まる抗リン脂質抗体症候群、一部のプロテインS 欠乏症、プロテインC 欠乏症、第Ⅻ因子欠乏症などの場合は、治療が必要になることがあります。
体外受精で2回続けて胎嚢確認後に流産しました。不育症に該当しますか?
赤ちゃんの袋が見えた後の2回の流産ですので、不育症になります。不妊症と不育症を併せもっている方は、少なくありません。厚生労働科学研究班(齋藤班) の班員に問い合わせしたところ、正確な値ではありませんが、不育症例の約1~3割程度の方が不妊症も併せ持っておられました。不育症のリスク因子の検査を受けることをおすすめします。
一人目は特に問題なく妊娠し出産しました。その後、流産が続いています。どうしたら良いでしょうか?
一人目の妊娠の際、リスク因子があるのにもかかわらず、運よく出産された可能性もありますので、続発性不育症として、同じように不育症のリスク因子の検査をおすすめします。ただし、リスク因子が見つかる確率は出産経験のない不育症と比べて少ないと言われています。リスク因子が見つからなければ、たまたま偶発的胎児染色体異常による流産を繰り返したと、ご理解ください。
流産をくり返し、気分が落ち込んで外出ができなくなりました。どう向き合えば良いでしょうか?
流産・死産の後で、うつになる方は少なくありません。まずは、今の気持ちを書き出してみましょう。また泣くのを我慢する必要はありません。御主人や家族の方に正直に今の気持ちを伝えてください。職場の方にも、勇気を持って事情を話すことは、時には必要です。このようなことをしても、解決できない場合、担当の産婦人科を受診し、症状を説明し、対応を御相談ください。重度なうつの場合、精神科や心療内科への紹介等が必要になる場合があります。
流産・死産した悲しみが消えません。同じように悲しんでいた夫が、今では流産・死産のことを忘れたようで、そのことが許せません。
女性は流産をした場合、自分の子宮から赤ちゃん(胎芽)が出たという実感があり、長い間忘れることができません。一方、男性はそのような感覚がないため、このような感情の乖離が起こってしまうことがあります。ご夫婦で相談に来ていただくなどして、女性の気持ちをはっきりと伝えていただくことで、男性側も女性の気持ちを理解できるようになります。不育症をお二人で共有していただき、お二人の意志で不育症治療についても相談していただければと思います。
2回流産し、次の妊娠が怖くて避妊を続けています。35歳という年齢への焦りもあり、どうすれば良いのか悩んでいます。
不育症の方の多くは、偶然胎児染色体異常をくり返した偶発的流産です。リスク因子にもよりますが、不育症の方でも最終的には80%以上の方が出産することができます。ただし、年齢が上がるにつれて、流産率は増加しますので、まずは検査をされてはいかがでしょうか。
不育症治療を経て出産した場合、次の妊娠でも同様の治療が必要になりますか?
不育症のリスク因子にもよりますが、次の妊娠でも同じように治療が必要となる場合があります。担当の先生とよく相談してみてください。
不育症の場合、妊娠前の普段の生活で注意することは何でしょうか?
不育症では、不安やうつなどの精神的な問題が起きることがあります。悩みや疑問について、主治医の先生に良く相談しておくことが大切です。不育症についてきちんと説明を受けることは妊娠予後にも良い効果をもたらします。必ず禁煙することと、過度のアルコールは控えるようにしてください。
参照:「地域における周産期医療システムの充実と医療資源の適正配置に関する研究」平成23年度厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)